コミュニティ難民とは、
現代日本における、
創造的な漂泊の民である。
こみゅにてぃ - なんみん
【コミュニティ難民】《名》
個人の生産活動において、特定の分野のコミュニティに重点的に属さず、同時に表現手段も拡散させることで、新たな社会との実践的な関わりを生み出す人々。
たとえば、こんなコミュニティ難民……。
(例1)銀行員であり、地域ファシリテーターであり、クリエイターが集まる大学の客員教授であり……。(例2)一級建築士であり、ラジオ番組の企画・制作者であり、雑誌編集委員であり……。(例3)DJであり、イベントプロデューサーであり、旅館当主であり……。(例4)職業訓練センターの職員であり、アートイベントの主催者であり、コミュニティサロン主宰であり……。(例5)ミュージシャンであり、NPO法人理事であり、ホームヘルパー2級であり……、現役大学院生であり……。
仕事をする上でひとつの「これ!」といったコミュニティ(専門分野や業界)に属さず(あるいは属することができず)、かつその時々に応じて表現手法・アウトプットも特定していないことによって、周りから「結局、あの人は一体、何屋さんなのだ……?」とか思われるような人、あなたの周り(あるいはあなた自身)に心当たりはないでしょうか?
時に周囲から「あいつは根無し草だ」とか「結局、一体何がやりたい人なんだろう?」って言われたりしながら、自分の分野や目に見えやすいアウトプットに縛られず、自分の「表現」したい「根っこ」を掘り下げるようにして「仕事」を作ってきた日常編集家のアサダワタルさんは、このような状態を「コミュニティ難民」というキーワードで現し、一冊の本に纏めました。それが本書『コミュニティ難民 ―表現と仕事のハザマにあること―』です。
どのコミュニティにも属さない(属せない)がゆえに、時として何をやっているかを伝えられず、かつ自分自身のぐらぐらしたアイデンティティの置き場所にも悩んできた著者は、しかしこの「難民的」な在り様を続けて来たからこそ、これまで出会うことのなかった様々な仲間たちとのコラボレーションを果し、社会に溢れる「当たり前」に対して風通しを良くする仕事を展開してきたのだと考えています。
本書では著者の自伝と絡めながら、仲間である銀行員、建築士、元DJの宿主、福祉施設で働く美術家、職業訓練コーディネーターやアートディレクターの、目を見張るような広範な活動を紹介しながら、「現代に生きるクリエイティブな漂泊の民=コミュニティ難民」について、思索と実践を存分に展開します。
内田樹氏や梅原猛氏らとの共著でも知られる、宗教学者・僧侶の釈徹宗氏との対談も収録!
コミュニティ難民のススメ
─ 表現と仕事のハザマにあること ─
アサダワタル 著
発売:2014年12月1日(月)
ISBN978-4-86324-080-3 C0095
四六判並製/326ページ
定価:1,728円(本体:1,600円+税)
アサダワタルさんは『コミュニティ難民のススメ』の刊行に合わせて、数多くの活動家の方たちとのトークセッションを重ねてきました。そのトークセッションの内容を書き起こし、コミュニティ難民の概念がどう捉えられ、対談のなかから、それぞれのアイデンティティにどう落とし込まれていったのかを記してみました。
家入一真 プロフィール
いえいり・かずま●1978年福岡県出身。株式会社キメラ代表取締役CEO。JASDAQ上場企業「paperboy&co.(現GMOペパボ)」最年少上場創業社長。国内最大手クラウドファンディング「CAMPFIRE」代表取締役。スマートEC「BASE」共同創業取締役。カフェプロデュース・運営「partycompany Inc.」代表取締役。スタートアップベンチャー投資「partyfactory Inc.」代表取締役。モノづくり集団「Liverty」代表。現代の駆け込み寺(シェアハウス)「リバ邸」を全国に作るなど、リアルやネットを問わず、カフェやウェブサービスなど人の集まる場を創っている。50社程のスタートアップ・ベンチャー投資も行う。「起業」「モノづくり」「新しい働き方」「これからの生き方」「引きこもり」などをテーマとした講演を多数おこなっている。著書に『もっと自由に働きたい』(Discover21、2012年)、『新装版 こんな僕でも社長になれた』(イースト・プレス、2012年)、『お金が教えてくれること』(大和書房、2013年)、『15歳から、社長になれる』(イースト・プレス、2013年)、『バカ、アホ、ドジ、マヌケの成功者』(サンクチュアリ、2013年)、『ぜんぜん気にしない技術』(クロスメディア・パブリッシング、2013年)、『ぼくらの未来のつくりかた』(双葉社、2014年)、『我が逃走』(平凡社、2015年)など。
佐々木 敦 プロフィール
ささき・あつし●1964年名古屋市生まれ。批評家、音楽レーベルHEADZ主宰、元早稲田大学文学学術院教授。20年以上にわたり、音楽、文学、映画、演劇などの批評活動を行なう。2015年にスタートした批評家養成プログラム「ゲンロン批評再生塾」では主任講師を務める。著書に『即興の解体/懐胎』(青土社、2011年)、『批評時空間』(新潮社、2012年)、『シチュエーションズ』(文藝春秋、2013年)、『「4分33秒」論』(Pヴァイン、2014年)、『ex-music〈L〉ポスト・ロックの系譜』、『ex-music〈R〉テクノロジーと音楽』(共にアルテス、2014年)、『ニッポンの音楽』(講談社現代新書、2014年)、『ニッポンの文学』(講談社現代新書、2016年)など多数。最新刊に『未知との遭遇【完全版】』(星海社新書、2016年)。
対談は随時更新されますので、どうぞお楽しみください。
いろいろな領域(コミュニティ)を島に見立て、そのハザマで生きるコミュニティ難民の行動を図解しました。